矯正歯科臨床で,歯にダイレクトボンディングか矯正バンドあるいはその両方を用いて,矯正装置=エッジワイズブラケットを装着して,ワイヤー=はりがねをセットして行う現代の包括的先進医療としてのマルチブラケット・エッジワイズ法の各ステップは,以下のとおりです.
第二段階)リトラクション ・・・抜歯したところに残ったスペースを閉じてゆくことによって,前歯の関係を改善してゆきます.
当院でおこなわれる矯正歯科治療MEMOテラピ−はインディアナ大学でDr. Burstone によって創意発展されたセグメンテッド・ア−チ・テクニックを,そのお口の中に10本ものワイヤ−が入る原本をストレ−トな1本のワイヤ−で表現し,さらに真に日本人のために改良を加えた方法です.その大きく他の方法と異なる点は,第一に矯正力を定量的にとらえることができる点.それから特に抜歯症例で通常は左右犬歯と4前歯を2回にわけてリトラクション(後方移動)させてゆくのに比較して,6前歯を一括してまとめて(En Masse = アンマス)移動させてゆきます.そのため他の方法より6ヵ月前後短い治療期間が約束されます.これは快適さのみに留まらず歯や骨の治療期間中の保全にも役立ちます.ジグリング・ラウンドトリップとよばれる無駄な動きをさせないため,歯根吸収や歯槽骨吸収をいった合併症の発生の減少にもつながります.
Dr.Bull によるループや Prof.Nanda のマッシュルーム・アーチ等が有名ですが
上のループは当院院長のオリジナルです.歯の移動は,
歯冠より長い歯根をルートパラレリングといって
平行に移動させてゆくことに大変な技術を要求されるわけですが,
インディアナ大学のこの方法=αβベンドを付与したリトラクションアーチでは
抜歯部に対し倒れ込もうとする歯にちょうど1/7〜1/10の
圧下力を加え続けることによって,歯がスムーズに平行移動してゆくのを助けます.
第三段階)ディテイリング ・・・インターディジテーションとよばれる両方の手の指を組み合わせたようなかみあわせを創ってゆきます.
確かに成人矯正では弱い力でゆっくりと治療すべきであることが広島大学のデータから明らかになっているが
初診時13歳の本症例では上のレントゲン写真で示されているとおり
歯槽骨吸収像=骨がちびるや歯根吸収=歯の根がちびる・・・などの変化は一切みられない
ジグリングやラウンドトリップとよばれる無駄な動きがないため,歯や周囲の組織の健康が保たれたと思われる